繁栄の光輝に、人間とクルマの蜜月時代に、
暗い影が忍び寄っていた。

人間の幸福のための良きパートナーとして
新しいルーチェは、低公害車の先陣を切った。
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● '72年、スマイルバッジが大流行していた。
札幌で第11回冬期オリンピックが開かれ(２月)、"ひかり" が西へ走り(３月、岡山まで開通)、沖縄が返還され(５月)、田中角栄内閣が成立(７月)、列島改造で好景気に一層の拍車がかかろうとしていたからだろうか。

しかし、列島改造論の青写真が発表されると、地価はうなぎ昇りに高騰。
高層ビルの建築ラッシュが始まる一方で、庶民のマイホームへの夢は打ち崩かれていった。

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●そのマイホームの代わりにというわけでもあるまいが、マイカーは早くも３世帯に１台という水準に達していた。

ところが、モータリゼーションで先行するアメリカではマスキー法がクローズアップされ、クルマが公害の元凶扱いをされ始めていた。
もちろん、日本でも排気ガス対策がマスコミを中心に社会問題として取り沙汰されるようになり、各メーカーの対応が注目されるところとなった。

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●新しいルーチェロータリーのシリーズが発売されたのは、そのように社会の眼が厳しくなった 11月であった。
そして、翌 6月このシリーズに、早くも公害対策(AP)車第１号が用意されていたのである。
排気マニフォールドにサーマルリアクターを取り付けたルーチェロータリーAPは、本格的な公害対策を求める「排出ガス規制」が施行される以前に、マツダとロータリーエンジンが目指す「人間尊重」の思いを高らかに宣言したのである。